72「秀作映画の夜」

9.3.mon./2007

★ユナイテッド93

お客サンに借りたDVDで映画「ユナイテッド93」をみた。
9.11テロ事件で唯一目標に到達できなかったハイジャック機墜落までの一部始終を描いた作品。

う〜ん、臨場感たっぷり。
俳優使わず、管制官や軍人役を当時現場にいた当人たちに再現してもらったことをあとで知った。朝の発着ラッシュで離陸が遅れてテロを完遂できなかったことなども初めて知った。ラスト、乗客たちが操縦室になだれこみ操縦桿を奪取しようとするシーンがあるが、そこまでたどり着いたのかということまでは調査でも不明らしい。

が、テロリストが必死に神に祈りつつ(皮肉にも乗客たちは別の神に祈り)民間人を殺戮する姿はやはり理解できず。彼らの顔つきみているだけでわが田舎の方言「にくどいなぁ」(憎ったらしい)という言葉を何十年ぶりかで思い出してもいた。・・・でも、テロリスト側からの視点で描いた同様の映画をみせられると、これまた「臨場感たっぷりでした」というような感想に終わりそうで、浅薄な自分にイヤにもなる映画。ただテロリストがハチマキをしている姿には日本人として終始違和感・・・。評価4/5

9.5.wed.

★ラッキーナンバー7

「ユナイデッド93」とともにお借りした、今年公開された映画「ラッキーナンバー7」もみた。

平凡極まりない題名ということもあり全然期待していなかった作品。
が、「思いがけなく!」となる好例のような、知的サスペンスといったらいいすぎかもしれぬが伏線につぐ伏線で、み終わって特典映像にも見入ってしまった。10年かけて練り上げられた脚本という。
「マトリックス」のウオシャウスキー監督の初期作品「バウンド」、コーエン監督の「バーバー」、そして先月だったか、たまたまみた「マザーナイト」なども「期待してなかったのに!」だったのを思い出してもいた。

「マザー」はあまり知られていないと思うが、モノクロの冒頭場面でイスラエルのナチ戦犯収容所に年老いた男が収監されるところから始まり、彼の回想で物語が(カラーで)展開していく。
男は(アクションスターのニック・ノルティ。役柄的にミス・キャストかもと。次第にその違和感薄れるが)、元ドイツ在住の米国人劇作家。
第2次大戦にアメリカが参戦する直前、米国諜報員からスパイの勧誘をうける。とくに明確な思想をもってもいないにもかかわらず、男はいわれるまま米国向けプロパガンダ放送を利用し暗号を送りつづけながらもナチの有名人となる。が、敗戦。戦犯でありながら、スパイゆえ国家の認めぬ隠れた英雄という彼の数奇な運命がここからさらに翻弄され・・・という悲劇。
途中「うそっ〜!」と驚いてしまうような出来事とともに「この展開はどうもなぁ」という難点もありだけど、印象に残る作品。ロマンス好きな方にもおすすめ。

話がそれたが、「ラッキー」での凄腕の殺し屋がブルース・ウイルス(脇役だが彼の作品には駄作も多いので期待薄だったのかも)、対立するギャングのボスたちを演じるのがオスカー俳優二人という、考えれば豪華配役。そのボスたちに殺人の請負や借金の返済を迫られる運のない青年が主人公の物語。
特典映像で、いくつかのカットされたコミカルな場面に対し監督いわく「シリアスさをそぐ」という意見になるほどと納得できる本編に仕上がっている。別バージョンのエンディングもなかなかのもので、4/5

9.8.sat.

60年代、高校の親友Мと放課後自転車に二人乗りしながら、町の映画館住吉座、常盤座(共に洋画専門館)、付録で邦画専門館二軒を巡りながら、上映中の、そして次週上映の映画ポスター見にまわっては映画を選んでいた時代にくらべ、寝転びながら好きなときに映画をみれるという時代が来ようとは思ってもみなかった。
だから当時、記憶に刻み込もうと同じ映画を何度もみたり原作本やポスターを集めたりの映画どっぷり生活。いま思えばあの時代のほうがはるかにシアワセだったような・・・。

先日もお客と話したけれど、かつて我輩、映画好きの息子に「名作やぞ」と黒澤明の「七人の侍」をビデオでみせると、「白黒やん!」と違和感大らしく冒頭でみるのを拒否されてしまったことが。が、我輩いまでもモノクロ作品みると、「映画だ!」と思ってしまう昨今でもある・・・。

★「今夜の名言!」

「マザーナイト」で、ニック・ノルティとアラン・アーキンの会話より。

「あんたを見た時、仲間の一人だと思ったよ」
「仲間?」
「魂の抜け殻さ。世界最大の組織だが入るまで気づかない。生きる意味を失った者が会員になれる。それが絆となり会員達をひとつに結び付けているが、決して互いに交流し合うことはできない」

アラン・アーキンは高校時代にみたヘップバーン主演の傑作スリラー「暗くなるまで待って」での非情な殺し屋役で初めて知り、その直後にみた「愛すれど心さびしく」では一転して孤独な聾唖者を演じて印象に残った名優。

「秀作映画の夜」完

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