137「悲しきボクたち」

6.3.wed./2009

★ネコが

先日の午後、店向かいの団地の芝生に市職員の姿が。

何気なく見ていると、ときどき職員が植え込みにホースで散水している。
さっきまで雨降ってたのに何してんねんやろ?
と、一人が子猫を捕まえて箱に閉じ込めるのを目撃。

会話に耳そばだててるとどうも植え込みの中に生まれたての子ネコ三匹がいて、団地住人の苦情でやってきた職員が散水で植え込みから追い出し、捕まえたのがそのうちの一匹らしい。

我輩が子供の頃はあちこちに野良犬がいて「犬捕り」という言葉をよく耳にした。子供心にその「犬捕り」、なにか恐ろしげなイメージだったけれど、捕らえてる現場を(相手はネコだけど)今回初めて目にした。もちろん「恐ろしげ」ではなかったけど。

う〜む、こいつら(ネコであって職員サンのことではない)即ガス室(だったっけ)送りか?
で、「お兄さん、それもろたろか?」とふと言いかけたけれど、見物人の中にうちのマンションの管理人さんが・・・。このマンション、犬ネコ飼い禁止。
それに我が店の砂ネズミのダミンとルビーもいまだ存命中で、わざわざ天敵導入するのもなぁ・・・。
我が家に持ち帰るなんてことは土台無理な話で、大人になってからも捨て猫なんかを拾ってきたりし女房のタヌコ(いや、改名してリ・フジンだった)に嫌な顔をされるうえに、すでにネコのインクと犬のチョークがいるわけで・・・。

この植え込みをネグラにしてるネコ共はしょっちゅう孕んでいる。
それはまぁ「元気やなぁ」と思うのだけれども、うちの植え込みを便所代わりに使われるのでこれには困る。いままで幾多の植物を買って植えては枯れさせられたか。たぶん土壌が完全汚染されてるんだと思うと「ざまぁみろ」とまでは思わないが、ふとそのようなことを思ってみたくなったのも事実。が、わざわざ市に通報まではしないけど・・・。

夜毎、帰宅途中のサラリーマンがそのネコ達にエサをやっている。
その気持ちも分かるけれど、「わしの植物も生きてんねんで!」といいたい。
「エサやって元気つけさせて、ゾクゾク子供生ませてガス室送り(だったっけ)やねんで。そんなカワイかったら連れ帰って女房にイヤな顔されてみぃ」といいたい。・・・一鉢二百円位(×何鉢かだけど)の植物のことで言い返されるのもアホらしいンでよういわんけど。

★捕獲

で、職員さん、結局二匹確保。
ふと横手の塀の上を見ると、ああ、母ネコが(たぶん。この場合「母」がふさわしい)二匹が入れられた箱をじぃ〜っと見つめてるではないか。
ネコでも涙流すのかしらん?と、その母ネコと目が合ってしまった。
我輩の心を読み取ったごとく、「おい、にいちゃん、うちのんもろてくれへんのんか?」と訴えてくるような目つきであった。涙は流していなかった。
しかし、泣くでもなく唸るのでもなく、その中間の悲しげな声を耳にすると、「おい、ムダでもカゴに飛び移って抵抗せえや、犬やったらそうするぞ」と思ったとたん、「あ、わしも寅年でネコ科やなぁ。えらそうにいえんわ」

昨今のわが身と母ネコの姿重ね合わせ、ともに掌から砂がこぼれ落ちるように「シアワセ」がどんどんどこかにいってしまってる悲しきボクたちでした・・・。

「悲しきボクたち」完

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