139「ざるそば物語」

6.14.sun./2009

★食べ方

サラリーマン時代の親友エム氏が酔いつぶれて店で寝てしまったその翌朝、TVの「和風総本家」って番組で「ざるそば」の食し方を紹介していた。
この番組初めてみたけれど、江戸小紋の由来とかをテーマに日本人の素晴らしさを再認識させてくれる。産経新聞的です。でもなぜサンケイスポーツはエロ新聞的なんでしょうか?
途中からみたので「盛蕎麦」と「笊蕎麦」の違いなど分からぬままだったけれど、「ざるそばの食べ方」には「なぁ〜るほど!」で、以下・・・

薬味は少量取り置き、ワサビは食する前の蕎麦にまぶしておく。
で、ワサビ付きの蕎麦三〜四本を箸にとり、その三分の二をだし汁につけ、蕎麦自体の風味を味わいながら食す。取り置いていた薬味はときおり口直しに食す・・・ってんで、二日酔いの我らふたり、「ざるそば食いに行こ!」

★とある店で

墨丸から最も近い、でも以前、丼物の米のあまりの不味さに遠ざかっていたとある店前にて「ここは麺もまずかったかしらん?」と、そのような気もするけれど二日酔いでもう蕎麦屋探して歩き続ける気力のない我らふたり、その店へ。

土曜の昼時ゆえか結構混んでた。
「これだけ混むということは、もしかしてウマイのかも?」

が、「いらっしゃい!」も「ご注文は?」も言われぬまましばらくして手があいただろう女の子呼び止め、「え〜っと」と注文しかけると無表情のまま(愛想が悪いわけではないのが気になる)、「ちょっと待ってください」
「なんかわしら、悪いことした?」「お前の人相悪いからやろ」と言い合ってるそのあいだの来店客たちにも「いらっしゃい」の声がなく、「う〜ん、すごい教育の店やなぁ・・・」

で、ようやく「ざるそば大盛り二人前」注文し、我輩「和風総本家」作法通りに食べ始め・・・
「うん?」二日酔いのせいかしらん?
「うん?」で、だし汁に蕎麦たっぷり浸して食する。
「うん?」で、ワサビかき集め、だし汁に放り込む。
「うん?」で、薬味も全部だし汁にぶち込む。
「うん?」と、黙々と平らげつつあるエム氏をみやる。

食後、表に出てエム氏開口一番「うまなかったなぁ!なんの味もせえへんやんか、あんなん初めてや!」
「なんや、お前もそう思たんか。そのわりに全部食べたやんか」
「もったいないもん」

我輩とてもじゃないけれど食べきれず、三分の二も残しての大盛り七百九十円也。あ〜、もったいな・・・。
人生で初めて「蕎麦」なるものをこの店で食べたのなら、死ぬまでもう蕎麦を口にしないであろう、なぜか完全無味無臭の薄茶色したヒモ的軟体植物群のようであった・・・。
「店員の教育もすごいが、味もすごい。その店で黙々と食するお客全員はもっとすごいかも・・・」にプラスしての、最近の憤懣本舗・・・以下。

なぜこの季節、自動販売機のコーヒーがすべて「つめたい」になってしまうのか。銀行ATM画面でアニメ男女のお辞儀にバカにされてる気がするのは我輩だけなのか。子供番組じゃあるまいし朝のニュース番組にぬいぐるみがなぜ登場するのか。ぬいぐるみでなけりゃキャバクラ嬢のようなキャスターがなぜ出てくるのか等など思い出し、心不安定となる墨丸クンでした。

★「今夜の本!」

墨丸会員541号てら吉クン持参の伊坂幸太郎本、ようやく読破。
総評として、「読みやすい」し、ストーリーよりも「洒落た言い回し」が印象的か。で、一冊読了し即次作に手を伸ばしたいかというと、そうでもない作家。とりあえず、その「よかった」順を、以下。

1.「終末のフール」
3年後に地球が破滅するかもしれない状況下での人々の生活を描いた八編。
てら吉クン「え〜、あんなのがイイんですかぁ」
2.「フィッシュストーリー」
中篇集。
てら吉クン「内容覚えてませ〜ん」
以上2冊は少々ホロリとさせてくれるゆえの評価よし。
4.「砂漠」
青春小説。「こんな青春送りたかった〜」と、てら吉クンおすすめ本。
我輩推薦の青春小説「夜の果てまで」(盛田隆二)は今ひとつのようで。
5.「モダンタイムス」
「続編」ではないのに、なぜか「魔王」の続編的作品。
6.「魔王」
なぜか「モダンタイムス」を読まなければ理解できぬ物語。

結論:てら吉クンとは気は合うのだが、本も映画も好みが違う・・・絶対!(コレ、伊坂作品での言い回しのひとつ。「絶対!」)

で、他作者の本に渇望していて手にしたのが、島田荘司の「異邦の騎士」(講談社文庫)。
著者の「秋好英明事件」に好意的だった会員734号チャンさんにこの本推薦したところ、なぜか低評価。で、今回その「改訂完全版」で再読、再確認。
出版当時「泣けるミステリー」と評判に。が、読後20年近くも経過すると内容完全に忘却。で、一晩で一気読み。

千賀子の悲劇が綴られる中盤はやはりショック。ページ伏せたくなって、宮部みゆきの傑作「火車」を思い出す。
また、「何だか良子がひどく弱々しい存在に思え、その時ほとんどせつないような愛情を感じて、彼女の肩を強く抱いた。異性に対する強い愛情は、悲しみと相性が良いということに、この時はじめて気づいた」なんて箇所は、当時の「今夜の名言!」にとりあげたことをも思い出していた。
けれど、再読ということで当初ほどの感動はなく、反面不満な箇所も目立ってしまい・・・。参考にかつての読後評を以下に

「息苦しいほどの緊迫感。予感される男と女の悲劇。記憶喪失の男に救いの手を差し伸べる美少女。彼らの幸せな日々に忍び寄る悪夢。(中略)その忍び寄る“不幸”への、読者としてのどうしようもないもどかしさが緊迫感を生み続けての、2時間30分でひさかたぶりの一気読み。鏡恐怖症など、出来すぎの感もあるけれど、傑作といってよし。評価5/5」、でしてん。

「ざるそば物語」完

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