152「チョーク死す」

9.7.mon./2009

★金貸しメガネ

メガネを新調。

墨丸千代田店の頃、常連の眼科医院看護婦さんたちが、「メガネを作るとき、どうしてみんな病院で処方箋をつくらないんでしょ?」
眼科で眼鏡屋処方のレンズ検査すると「どうしてこんな合わないのを?」とのことしばしばだという。
で今回、眼科で処方箋作ってもらいレンズ新調。
二回の通院検査で六千余円は痛いけれど。いや、これは痛すぎるでしょ?眼科で処方箋作らぬわけが分かるような・・・。

・・・しかしどうしてこうも画一的なんだろ、売られてるメガネフレームが。
我輩子供の頃の漫画「おそ松くん」脇役の「イヤミ」が掛けていたあの横長縦細フレームの、当時の世相で言えば「金貸し」象徴のようなフレームばっかりではないか。
眼科紹介割引店の「メガネのミキ」のような大型店でもそう。
フレーム選定に渋る我輩に店員さん「他店にも当たってみます」というので数日待ってでかけると、やはり我輩愛用の「レトロ」タイプは皆無と。
で、十数年前に作り、使用していないメガネにレンズを入れもらった。
ダーツ・バー同様、この妙な金貸し型フレーム流行も長いですなぁ・・・。

★チョーク

9月1日(火)夜、「朝方、チョークが死んだ」と娘からメールあり。

チョークは我が家の白柴犬。
先月28日金曜日のメールが「月曜ぐらいから調子が悪く、死にそうやから最後に撫でてやったら」。で、29日に帰宅。
植え込みの根元に横たわったまま、かすかに尾をふるのみ。いや、それでも振るのだ。
肝臓中心に、人間でいえば多臓器不全。医者いわく、すでに「七十数歳」とかで、体型小さく元気はつらつだったゆえ「そんな年だったのか・・・」

そうこうしてると、黒白ぶちネコのインクが庭先に登場。
「墨丸」にちなんで、「白墨・チョーク」と「墨・インク」なのだ、二匹の名が。
ネコも犬と同じで、ご主人様が帰宅するのを察知するのか、深夜玄関先に車を止めようとするとガレージの屋根にちょこんと座っていたリ、どこからともなく足元に現われたりする。
犬と違うのは「お〜、可愛いやんけ」と抱こうとするとスルッと手の下かいくぐって逃げてしまうことだ。むかつく。

で、「おい、お前の友達、死にそうやねんで」といってはみても、インク無関心。心底は分からぬが・・・。
そういえば、このインクもチョークと同じころ飼いはじめたんだからほぼ同年齢か・・・。

我輩帰宅すると、チョークは泥足でじゃれつかれるのが、わずらわしかった。
が、「犬は主人を待つのが仕事」とか、フランス格言の「愛は三タイプのみ。母の愛、犬の愛、愛人の愛である」(「妻の愛」がないのが素晴らしい)なんてこと思うと、深夜帰宅しても吼えもせず、今夜こそご主人さまが犬小屋に寄ってくれるかなぁ、とジッと待機。そのあとガックリしてたんだろか。ああ、泥足ぐらい我慢しとけばよかったか・・・。

テレビのドキュメンタリーで、主人が遠く離れた会社で帰宅をとデスクを立つと、テレパシーなのか自宅の犬がムクっと起き上がるという検証番組があった。
主人が自宅近くになると玄関先に。でも主人が途中で居酒屋に寄ると犬小屋にUターン、というのをみて「感動」したものだが、そんな実験試してみる前に(我が妻の本能はとっくに退化。そんなのがあったらの話だけど)、チョークは死んでしまった。
その朝方、我輩は我孫子の居酒屋で飲んでいた。虫の知らせというものは、確かなかったように思う・・・。

純血種より雑種のほうが賢いという。
不要犬を保護している施設から貰い受けた、秋田犬とシベリアンハスキーの混血雌の成犬がそうだった。
たまに鎖から逃れてしまい、呼んでも戻ってこないときなど、我輩死んだまねして道路に横たわると、心配なのかすぐ近寄ってきては捕まえられたものだ(これは雌のやさしき本能だ。人間にはそれはもう失われているけれど)。
雄のチョークなどは腹が減るまで帰ってこなかった。ま、これは我輩と同様だけど。そう思うと「ご主人様思いの実験」などせずのままでよかったか、とも。

その混血犬が深夜帰宅すると、玄関に横たわっていた。
「なんやねん、こいつ。こんなとこで何してんねん」と、「ハウス!ハウス!」と叱ると、ベランダの犬小屋に戻っていったが、その数日後、子宮に血が溜まっていたとかで死んでしまった。
うちの母親はこうして動物が死ぬと「しゃべれんからねぇ・・・」というのが口癖だが、ああ、あのとき死に場所探してたんやなぁと、いまでも心残りである・・・。

★グラーグ57

書店で「ん?似たような題やなぁ」とその文庫本手にとると、な、なんと昨年の傑作本「チャイルド44」の続編、トム・ロブ・スミス「グラーグ57」(新潮文庫)だった。

人々を逮捕し強制収容所送りにする職務にたずさわるソ連国家保安省職員レオ・ドミノフの物語の前作については以前紹介。その続編は、フルシチョフのスターリン批判に端を発し、投獄されていた人々が秘密警察職員や密告者に対し復讐を開始。ついにはハンガリー動乱に至るという展開。
圧巻は、極北の「第57強制労働収容所」にレオ自身が収容され、そこで彼がかつて投獄した男にめぐり合って逆に過酷な拷問を受けるという皮肉な展開。そしてオホーツク海を航行する囚人護送船の描写か。

本日「さぁ、いよいよラストだ!」とわくわくしながら読み始め、「あれ?・・・ここ読んだ?」
・・・惜しむらくはもったいなくも昨夜、日曜日ゆえ早々に店を閉め、墨丸会員541号てら吉クンと居酒屋二軒はしご。そのあと前後不覚の酔眼で読み終えてしまったことすっかり忘れていた・・・。で、なんか中途半端な読後感でも、評価4/5。

「チョーク死す」完

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