397「今夜の本!」2/2018のベストは?

3.4.sun/2018

★「今夜の本!」

ガジュ丸評価基準。
5「傑作」4「秀作」3.5「佳作」3「普通」2「凡作」1「駄作」。NF=ノンフィクション ※=再読作品。

01.「何者」朝井リョウ/新潮文庫/2.0 [直木賞]
02.「曼荼羅道」坂東眞砂子/集英社文庫/4.0 [柴田錬三郎賞]
03.「もう年はとれない」ダニエル・フリードマン/創元推理文庫/3.5
04.「マゼンタ100」日向蓬/角川文庫/3.5 [R18文学賞]
05.「紫の悪魔」嚮堂新/光文社文庫/3.0 [新潮ミステリー倶楽部賞]etc
06.「深川通り魔殺人事件」佐木隆三/文春文庫/NF/3.0

★「期待作!」

やはり「何者」だろう。直木賞受賞作なんだから。
が、我輩興味のない「大学生の就活」「SNS」の日常が延々と綴られ、「ラスト30ページ、物語があなたに襲いかかる」というけれど、我輩としては「最初っから物語ってや」と、もうどうでもいい気分。無冠の太宰治先生の作品群にくらべ、「いまやコレで直木賞?」。録画した映画版観てみようか、観る気も失せてるけど・・・。

期待のノンフィクションは、「深川通り魔殺人事件」だ。
昭和56年、小心者の寿司職人川俣軍司が女性と子供ら6人を殺傷した通り魔事件。川俣の生い立ち、転々とする職場遍歴の果ての弱者殺しに至る前半は読ませる。が、続く川俣の狂気性について争われる裁判描写になると、裁判官、検事、弁護士の弁そのままの句点なしの長ったらしい筆致となり、もう飛ばし読み。心神喪失、心神耗弱で減刑なんて、殺人者はすべからく狂気に陥っているようなもんだろうと毎度のごとくイライラ。
本書で「杉並通り魔事件」を知る。昭和38年に6歳から14歳の男児11人が男根を切断されるなどした異常傷害事件。犯人は裕福な家庭の成績も良かった高校二年生。さらに、戦前からこうした異常な少年犯罪や親殺しは珍しくもなく、かえって多かったというのだから恐ろしいではないか、駆逐されぬ負の本能って。

★「寸評!」

先月の「今夜の映画!」推薦作「手紙は憶えている」は、90歳の認知症老人が元ナチの将校に復讐しようとする物語だった。そして今月読んだ「もう年はとれない」も、87歳の元殺人課刑事が主人公。
映画と同じく、戦犯のナチ将校を追うという、奇しくも共に普通なら年寄り臭くて観たくも読みたくもない作品。が、共にこうした高齢者が主人公ならではという納得できる展開。本書などクリント・イーストウッド演ずる刑事ダーティ・ハリー晩年の姿をみているようだった。

★「ガジュ丸賞!」

直木賞の傑作「山妣(やまはは)」の作者、坂東眞砂子「曼荼羅道」だ。
戦時中、マレー半島までも進出していたという富山の薬売り。その職の男を追っての戦後、現地妻のサヤは苦難の道のりを経て日本の愛する男のもとにたどり着くのだが・・・。
そしての現代。男の孫が妻とともに富山に帰郷。この二組の男女の愛憎の人生が忘れ去られた廃道「曼荼羅道」で交差する。
黒岩重吾解説でいわく「結末においてやや書き足らない部分がある」はその通りながら、坂東さん描くところの土俗に根ざした情念の世界にふたたび引き込まれてしまった。

「今夜の本!」2/2018 完

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