400「今夜の本!」3/2018のベストは?

4.4.wed/2018

★「今夜の本!」

ガジュ丸評価基準。
5「傑作」4「秀作」3.5「佳作」3「普通」2「凡作」1「駄作」。NF=ノンフィクション ※=再読作品。

01.「死国」坂東眞砂子/角川文庫/3.0
02.「硝子の葦」桜木紫乃/新潮文庫/3.5
03.「ラブレス」桜木紫乃/新潮文庫/4.0 「島清恋愛文学賞」
04.「雪の断章」佐々木丸美/創元推理文庫/3.5
05.「嘘 the lie i told」北國浩二/PHP文芸文庫/4.0

★「期待作!」

「夢中で読めた。紛うことなき徹夜本だ」との、青崎有吾という作家による帯の推薦文。その作家も、作品「雪の断章」の作者(1949〜2005)佐々木丸美さんの名も今回初めて知った。

迷子になった5歳の孤児が親切な青年に救われる。数年後、孤児院から養女に出された家庭での虐めに耐えかね家出した少女は偶然にもふたたびその青年に出会い・・・。
1975年に発表された著者デビュー作の本書は版元代えつつ出版され続け、我輩手にしたのは2015年版。それほど永きに渡りわたり読みつがれている、孤独な少女の心の葛藤が描かれる力作・・・というのだが、一青年が少女を養女として育て始めるという前半の設定でつまづいてしまった。独身男性が養子縁組などできるんだろうか。で、まったくの徹夜本とはならず・・・本書が代表作らしく、他の作品はゆえにたぶんもう読まぬだろう。推薦者青崎有吾の作品などはもちろん手に取らぬと決めた。

「雪の断章」手にしたとき、今月の「ガジュ丸賞」は先に読んだ「ラブレス」いずれかになるだろうと予測。が、「雪の断章」こうして脱落。
「ラブレス」は、北海道開拓農民の極貧家庭で育った少女が奉公に出され、やがては旅芸人の座員となり、裏切りと絶望の流転の人生を歩む展開・・・。
著者の直木賞作「ホテルローヤル」、読者の判断に委ねてしまう結末が少々不満の同著者の「硝子の葦」より断然我輩好みと結論づけたところに新たな作品登場。で、以下は「ガジュ丸賞!」につづく・・・。

★「寸評!」

「死国」は高知、「硝子の葦」「ラブレス」「雪の断章」は北海道、「嘘」は関東付近の山村と、それらの土俗を背景に物語が丹念に書き込まれており、いずれも展開に深みが感じられた今月の作品群。

★「ガジュ丸賞!」

北國浩二「嘘」だ。
奇しくも「期待作!」2作のヒロイン同様、不幸な幼少期を送った少年が登場。
絶縁状態の父親が認知症との知らせに、絵本作家の女は嫌々ながら父の住む山村におもむく。過去の確執引きずりながらの介護暮らしに、両親に虐待され記憶を失った少年が加わることでその生活に幸せが芽吹き始めるのだが・・・。
周囲の人達に少年を「実子」などとの嘘を重ねつつ、次第に症状が悪化する父親、恐ろしい記憶を取り戻すかも知れぬ無戸籍児を育てる不安定な生活。ページめくるごとに「破局」が待ち受けているのではないかとの予感に幾度も読み進むのをためらって・・・。
冒頭から続く緻密な展開にくらべ、最終章がパタパタと早急すぎると思っていたところに、ラスト衝撃の一行。「ああ、そうだったのか・・・」と、今月オススメの一冊に。

「今夜の本!」3/2018 完

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