423「24時間戦えますか!」第二話

8.24.fri/2018

★初のセールス

前回「翌日は我輩一人でこのスタンドに赴き、丸一日無駄にしてもう不機嫌なオーナーと二人、奈良の町をその機器かかえて売りさばかねばならないのであった・・・」で終わっていた。

で、またたく間にその時がやってきてしまった。
その朝の複雑な心境・・・不信感あらわなオーナーに一日どう接すれば?係長でダメならば研修セールストークなんて机上の空論?そもそもこんな機器に需要あんのかいな?今日もアカンかったら夕方まで神経もつやろか?このまま逃亡・・・云々と、初のセールスプレッシャーぷらすの若輩者のその心境、お分かりいただけるだろうか。

その電子健康機器というのは、今も各社で売られているパット付きの、腹筋引き締めたり肩こりほぐすとかいう家庭用低周波治療器(この機器の話はNo.336にも)で、スタンドオーナーとお得意様宅に伺い、まずは我輩がお客に各種効能説明しつつサンプル品でのお試し体験を。そして当時としては少々値の張るソレが月々のローン活用すればこんな楽なお支払で済みますよと説明説得。さらにオーナー自身が今後その商品を販売できるよう、オーナーにもセールスしていただいての指導監督。そののち、今後その商品をオーナーさんに独自販売していただくことが目的の、今回の奈良訪問・・・。

スタンドオーナーと二人、奈良市内のお得意様宅駆けずり回っての、午後8時すぎ。奈良の駅から会社に電話を入れた。
「Sです。今終わりました・・・」
「何しとんねん今まで!何台売れたんやッ」
「はぁ、10台です・・・」

疲れ果ててもう満足に声も出なかった。
売れた喜びよりもセールスってこんなにしんどいもんかと思うばかりの午後10時、重い足引きずりながら本社ビル二階営業部ドア開けると、なぁんと、社員全員が待ち構えていた。で、全員の拍手で迎え入れてくれ・・・ても、喜びよりもしんどさが勝っていたのと、前日一台も売れなかった係長と目を合わすのが怖かった、というのはやはり純真な若さゆえだったのだろう・・・。
後刻思った。10時まで待機させられた営業部社員、我輩のこと恨んどったやろな、と。

★え、まだ?

翌日だったか、社長とNo.2が我輩をミナミの高級クラブに連れ出してくれた。
「Sよ、ここは我が社の幹部がいつ使ってもええ店やからな」と笑顔でホステスさんらに紹介され・・・ても、ああ、これからずっとあの調子でセールス続けんのかよと、なんか重〜い気分だったことしか今はもう憶えていない、のだけど・・・その時にはまだ、「最後の研修」という想像もしていなかった、セールスよりも過酷なコトが待ち構えているとは知る由もなかったのだ・・・。

まさに「24時間戦えますか!」に、つづく

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